最近は、貧しさや戦争を逃れてやってくる移民や、あるいは自分から海外に出て働く人々が多い時代です。それゆえに、軋轢や混乱が生じているのも確かです。『パディントン』はそんな時代にぴったりの映画です。
▽パディントンの予告編はこちらから
ペルーの奥地に住んでいる知性あるクマ、パディントン。ある日、彼の家は地震でつぶれてしまいます。パディントンが頼ったのは、かつてここを訪れた探検家でした。探検家を探すためにパディントンはロンドンに向かいます。そこで知り合った家族の家に、探検家が見つかるまで住まわせてもらうことになり……。
子ども向けゆえにコミカルなシーンが多く、飽きさせないつくりになっています。見ていると吹き出してしまうこともしばしばありました。ちょっとした脇役が面白いことを言うのが楽しいです。
パディントンはクマなので、人間社会の常識や文化をよく知りません。それゆえに何度もトラブルを起こし、あわや家を追い出されそうになります。しかし、家族とパディントンはお互いを知ることによって絆を深めていきます。かたくなだったお父さんや、反抗期の娘の心を開かせ、パディントンはロンドンに居場所を見つけます。
そして、パディントンという「外側の存在」から見た人間社会も考えさせられるものがあります。探検家はイギリスを紳士の国だと教え、パディントンはそれを信じてやってくるのですが、実際のロンドンは行きかう人に助けを求めても誰もが無関心です。よそ者をいないものとして扱うことの傲慢さ、冷たさを感じ、実際の現代社会と重ね合わせるところがありました。
『パディントン』は、何度も苦労をしながら絆を深めていくパディントンと家族の、異文化交流物語です。笑ったり感動したりするのはもちろんですが、これを見ると異文化への歩み寄りに考えさせられるところがあります。子ども向けでもちょっと歯ごたえのあるものが見てみたい方におすすめです。もちろんあまり考えずに見ても楽しめるエンタメ性もあります!
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